香港の法制度は、1997年の中国返還後も香港基本法(Hong Kong Basic Law)による「一国二制度」の原則の下、英国同様にコモン・ロー(common law判例法)制度を維持し、香港の裁判所の過去の判例が先例として非常に重視される。他のコモン・ローを採用している国や地域の判例も参考にできる点など、国際ルールに基づいた近代的な法律環境が整っている。
1 香港における民事と刑事
1.1 原告と被告について
刑事訟訴:刑事訴訟を提起する権利は香港特別行政区政府にのみ帰属し(以下、香港政府とする)、個人と法人が当事者となるのは被告人となる場合だけである。
民事訟訴:個人、法人、香港政府は原告として民事訴訟を提起することができる。同じく個人、法人、香港政府を被告として訴えることもできる。
1.2 勝訴のための立証基準について
刑事訴訟:検察官は被告人を有罪にするために該当罪を「合理的な疑い以上」(beyond reasonable doubt)のレベルまで証明する必要がある。この基準は非常に厳格である。
民事訟訴:原告側が勝訴するかは、「可能性の秤でどちらがありえそうか」(on a balance of probability) という基準で判断される。これは刑事の基準より大幅に緩やかである。
1.3 上訴について
刑事訴訟:第一審で被告人が無罪となると、案件は終了し、検察官は上訴できない。
民事訟訴:原告であれ被告であれ、第1審で敗訴した側は上訴する権利がある。
2 民事訴訟を担当する機関
香港において民事訴訟を担当する機関は、主に裁判所と審裁所である。前者は手続に関する規則が厳格に定められており、当事者はこれを遵守する必要がある。一方、後者は一部の規則が緩和されており、本人訴訟に向く。香港の司法機構は、行政府と立法府から独立して運営している。香港の裁判所の階層は以下の通りである。
2.1 裁判所(Court)
- 終審法院(The Court of Final Appeal )
– 香港の最高位の上訴裁判所である
– 担当する案件:(i) 金額を問わずCFAの判断で審理するべき案件(注1) 上訴法院から上告・上訴を管轄し、最終的な審判を下す。あるいは、(ii) 公衆の大きな関心を引く重要な論点がある民事上訴と刑事上訴も処理する。
– (i) 或いは(ii) に当てはまらない上訴の場合、一般的に受理しない。
- 高等裁判所(High Court 高等法院 )
高等裁判所は上訴法院(Court of Appeal)と原訟法院(Court of First Instance)という二つの裁判所で構成される。
- 原訟法院は、香港民事裁判の最も主要な裁判所である。下記の案件に対して管轄権がある
– 訴額が300万香港ドル以上の民事訴訟
– 地方法院の権限以外の争い
– 専ら原訟法院のみしか処理できない案件。例えば清算、個人破産、政府や公的機構の決定に対する司法審査(judicial review)
– 小額裁判所からの上訴(しかし事実関係を争うのではなく、法律の解釈だけを争点とする)
– 重大な刑事事件
(ii) 上訴法院は、原訟法院と地方法院からの民事および刑事上訴を処理する。
- 地方裁判所(District Court 地方法院)
原訟法院と異なり、民事と刑事管轄権において地方法院の権限は、ある程度制限される。民事事件については、以下を取り扱う。
– 7.5万香港ドル以上300万香港ドル未満の契約、準契約関係(quasi-contract)、不法行為(tort)から生じる争い
– 年間賃貸額または年間鑑定額が32万香港ドル未満の土地や物件の
回収
– 賃貸関係の争い
– 信託、住宅ローン、詐欺、ミス、パートナーシップの解散、もし土地や不動産にかかわらない場合、300万香港ドル未満。土地や不動産の場合、700万香港ドル未満。
-12ヶ月以下の賃貸料の回収
– 性差別や障害差別などの案件
– 離婚、慰謝料、子供の権利(註:地方裁判所の中に家庭裁判所が設置された)
2.2 特別な裁判所 (Tribunal 審裁処)
(d) 小額裁判所(Small Claim Tribunal)
– 訴額は7.5万香港ドル未満で、契約、準契約関係(quasi-contract)や不法行為から生じる民事訟訴
– 法令上、7.5万香港ドル以下の民事訟訴は小額裁判所の専権である
– 原告・被告共に、法廷では弁護士に訴訟活動を委任することが禁止されるのが特徴
- 労働裁判所(Labour Tribunal 労資審裁処 )
– 賃金、休暇、年金、解雇に関する労務関係を取り扱う
– 原告・被告共に、法廷では弁護士に訴訟活動を委任することが禁止されるのが特徴
- 土地裁判所(Lands Tribunal 土地審裁処)
– 土地や不動産から生じる争いに関する特別な裁判所
②に続く


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