香港ポストコラム 『香港にある資産の相続手続き』
- 2015年06月24日
- カテゴリ:コラム
香港にある資産の相続手続き
・香港法人の株主が亡くなった。
・主人が駐在中に亡くなった。
普段あまり考えたくないことですが、意外にこうした40代の働き盛りの方の相続案件を受任し最近、経営者向け保険を購入したところです。ところが保険会社から健康診断が要求され高血圧で引っかかったため、ビールを自粛の日々です。
話を相続に戻しますと、日本の銀行口座や金融機関であれば、遺言書があれば遺言書に従い、遺言書が無ければ、相続人同士で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書により金融機関からお金を引き出すことが可能です。
その一方、香港では例え相続争いがなかったとしても、日本での遺産分割協議書は全く意味がなく、15万香港ドル以上の資産が香港にある場合、必ず香港の裁判手続きが必要となります。香港にある預貯金、不動産、法人等の資産は、必ず、裁判所の許可を受けなければ移動や譲渡することは一切できません。
単に香港人が香港で亡くなった案件と異なり、香港に資産がある日本人が亡くなられた場合、国がまたがるため、法律と言葉の壁があり非常に面倒な手続きとなります。
弊所で承った印象的なケースは以下の通りです。
①日本で弁護士にお願いしたが、らちがあかないので、香港まで飛んで来たケース
東京で弁護士に依頼したものの、銀行に問い合わせて必要そうな戸籍謄本などを翻訳し、公証まではしてくれたものも、その後放置され…。という感じの様でした。
仕方なく香港まで飛んで来て銀行に問い合わせたところ、香港人弁護士を紹介されたのですが、その弁護士は日本語が分からないため日本語が分かるアンディ弁護士に回ってきました。子供が亡くなられて悲しんでいる間もなく、杖をつきながら夫婦でいらっしゃいました。残念ながら、日本の弁護士に用意された書類は、香港の裁判所で認められるものではありませんでしたので、再度、すべての手続きがやり直しとなりました。
②取締役および株主を務めていた一人が亡くなられたケース
その手続きの複雑さからか2件の香港の法律事務所が投げ出し、3年近く相続手続きに時間がかかっていました。弊事務所は、会社側の弁護士として雇われたのですが、相続手続きがなかなか終わらないので、その間のビジネス運営にも支障をきたすレベルでした。
上記の様に、香港に資産がある場合は、たとえ日本在住の日本人であったとしても、香港にある資産分の相続手続きは香港で行われることになります。裁判所でプロベートという手続きが必要であり、この手続きは、相続人か香港法の弁護士(ソリスター)しか認められていません。相続手続きを行う遺産承弁所(Probate Registry)の審査員ですら「この申請形式は何だね。見たことがない」と問い合わせの電話がかかってきたこともあるくらい例え相続担当者であっても、香港にとって外国人である日本人の相続手続きは特殊です。まずご自身で手掛けるのは無理でしょう。尚、この手続きを法律事務所以外が代行するのは違法ですのでご注意ください。
万が一、香港に資産がある日本人がお亡くなりになった場合は、まずは香港法の弁護士にお問い合わせ頂くのが得策です。わざわざ相続人が香港にお越し頂くことなく手続きが可能です。
(このシリーズは月1回掲載します)
筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表 米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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