香港ポストコラム 「契約」とは
- 2016年10月03日
- カテゴリ:コラム
「契約」とは
今回は法律面から契約についての説明をしたいと思います。
契約の要素…数百年前から決着された法律観点によると、有効な契約になるために以下の要素が必要です。
⑴オファー
⑵承諾・受領
⑶対価・約因
⑷法律関係を作る意図がある
⑸行為能力(未成年者、精神障害者、酔っ払いなど)
⑹契約の性質(不法ではない)
オファー
契約を構成するためには、オファーがはっきりしていないと成り立ちません。
①私は、この車を1000香港ドルであなたに売るオファーをする。
②この車を売る気があるけれども、興味がありますか?
③私はこの車を1000香港ドルであなたに売ることを考えてる。
①のみははっきりし、②と③は曖昧なのが分かるでしょう。
承諾・受領
契約関係になるためには、オファーを受けた方の承諾は必ず元のオファーに対して無条件で受領しなければいけません。例えば、Aは元のオファーで1000香港ドルを提案し、Bが950香港ドルの反提案した場合、もしAがその反提案を拒否したら、法律上Bは無条件で受諾したわけではないため、1000香港ドルで契約関係を作ることは破断となります。簡単に言うと、Bの950香港ドルの反提案により、二人の関係は交渉段階に戻ります。逆に、AがBの反提案に同意した場合、Bの950香港ドルはオファーとなり、Aが同意することで承諾になり、950香港ドルで契約関係が発生します。
対価・約因
対価もオファーと受領と同じく、契約関係の要素のひとつです。簡単に言えば、対価というのは契約関係の中でお互いに『価値がある』ものを与えるということです。『価値』があれば、不公平であっても、法的には十分な対価と認められます。
例えば、コストが百万ドルの商品を1ドルで売ることは非常識ですが、1ドルは法律上『価値』があるものなので、その1ドルは『対価』として認められます。もうひとつの例として香港政府は時々1香港ドルの対価で土地をチャリティー団体に売ることがあります。その1香港ドルは法律上十分な対価なので、香港政府とそのチャリティー団体の間に法的に有効な契約関係が生まれます。
法律関係を作る意図がある
日常の社交的な関係や家庭内関係により生じた行動は法律関係を作る意図がないと想定されています。一方、ビジネス関係により生じた行動は法律関係の意図があると想定されています。
簡単な例で説明すると、親戚の子供に試験前に勉強を教えると約束して、もしその約束を破っても、家庭内の関係だけで、法律関係を作る意図がないと見られるので契約違反とは言えません。逆に、塾の派遣家庭教師は生徒の親とビジネス関係であるので、勉強を教えないと解約違反となる可能性が十分にあります。
行為能力
未成年者や精神障害者は法律上行為能力がないと見られるので、一般的には彼らとの契約は弱者を守るために執行できません。
しかしこれはあくまでも原則なため、例外があり、例えば『契約』とは (15 Sep 2016)(香港法律第26章)により、未成年者や精神障害者に生活必需品(例えばコンビニの水)を販売した場合、該当未成年者や精神障害者はお金を支払う義務があります。つまり契約は法的に有効です。ありえない例えですが、逆に言うと、宝石屋で十歳の子供に宝石を売った場合は、宝石は生活必需品ではないため、該当子供は契約を履行する義務がありません。
契約の性質
違法な契約は法律上執行できません。典型的な例ですと、人を殺すことは違法なため、人を殺す契約は法律上、執行できません。
以上の要素が揃うと、基本的に法律上契約が成立します。これから契約関係を築く方は以上の点を気をつける方がいいでしょう。
(このシリーズは月1回掲載します)
筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤 務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
www.andysolicitor.com
info@andysolicitor.com