香港ポスト『香港会社の閉鎖・清算に関して②』
- 2023年01月31日
- カテゴリ:コラム
会社清算の方法
清算の目的と会社の状況により清算方法を考える必要があり、大きく分けると以下の2種類の清算方法がある。
① 強制清算(compulsory liquidation)
強制清算手続きは、破産管財人(Official Receiver)及び裁判所の管理下で行われる。強制清算は圧倒的に債務返済不可能のために債権者が裁判所に債務者である会社を清算させる申請である。以下の清算手続きと比較し、手続きが非常に厳格である。
まれに、債務のためではなく、株主同士の信頼関係決裂や争い、会社管理の排除や少数株主への不正・不平対処のために、裁判所へ会社を清算させることを要請するケースもある。
裁判所で解散命令を発した場合、直ちに、取締役の権限が失われ、会社が清算される。
② 任意清算(voluntary liquidation)
任意清算は裁判所を通さない清算手続きである。この任意清算には、3つの任意清算方法がある。
a 株主による任意清算(株主提起、株主主導)
b債権者による任意清算(株主提起、債権者主導)
c特別手続きによる清算(役員提起、債権者主導)
a 株主による任意清算とは?
『株主による任意清算』とは、会社に支払能力のある場合の清算手続きであり、全ての債務を全額支払い、株主は出資した資本を回収し清算する方法である。株主により提起され、株主主導で手続きを行う。負債のためではなく、他の理由、例えば典型的な理由は、株主がリタイヤする、会社の存在する意味が設立当時と状況が変わった、或いは、元々、定款で定めた期限付きであった。などである。
この清算の一つの重要な条件は必ず支払能力があることである。つまり、負債に対して全て弁済できる能力がある必要がある。この申請時には、取締役全員が必ず支払能力がある旨の確認書に署名しなければならない。無責任な確認は刑事責任を追求される恐れがある。
万が一、清算中に状況が変わり、負債が支払えなくなった場合は、この清算手続きを直ちに債権者による任意清算に変更する必要があり、簡単に言うと、すぐ債権者会議を開催する必要がある。特徴としては、この清算方法の会社は負債を支払えるため、債権者に債権者会議や報告義務がなく、破産管理局からの干渉もないため強制清算よりは容易である。順調な場合で、1年程度の清算期間がかかる。
b 債権者による任意清算とは?
『債権者による任意清算』とは、支払い不能に陥った会社株主により開始され、決議により、会社を清算する決定のことである。負債により債権者裁判所で訴えられるより、自ら清算させたい。或いは、債権者は自身が株主である場合などである。この清算の特徴は、自ら清算を開始するものの、必ず債権者の会議や報告義務があり、債権者や政府の諸役所(清算管理署、労務署、税務署)からの関与も頻繁になることである。a-cの任意清算の内、この債権者による自主精算の清算方法が圧倒的に多い。
清算にかかる期間は、債権者数や資産のリストアップや処分にかかる時間により変動することになるため、一概には言えないが、通常約1年~1年半かかることが多くなっている。清算完了後、法人は完全に消滅し、復活はできない。
c 特別手続きによる清算とは?
会社の非常事態で、株主の決議さえ待たずに過半数の取締役が自ら清算手続きを提起する清算である。この清算方法は前の2つより珍しい。
法律によると“非常”の定義は、負債の理由により会社がそのビジネスを続けられないという意見が形づけられた場合のことである。
具体的にレストランを例にすると、明日の光熱費、賃金、材料費すら払えず、会社が1日でも継続すると、会社の“責任”が更に増す状況下において一刻の猶予もない時である。夜、従業員が皆帰宅した後、すぐに扉に清算通知を貼る。次の日に従業員が出勤し気がつく様な清算であり、香港では時々新聞で見かけるでしょう。この清算は最もドラマテックで、怒鳴る従業員が債権者会議に殺到することになる。私が手掛けたケースは会社で不正があったため3年ほどかかったケースもある。
bとcはスタートが異なるのみで、後の手続きはほぼ同じである。
会社の清算を考えた時、どの清算方法が御社の状況に適しているかについては、各々の状況により異なるため弁護士にお問い合わせ下さい。