『悪徳商法について』香港ポストコラム
- 2013年07月25日
- カテゴリ:コラム
悪徳商法について
従来、香港には悪徳商法に対して消費者の権利を守る法律はあまりありませんでした。「商品説明条例」という法律はありましたが、消費者の権利を守るという点から見ると非常に幅が狭く、商品を販売する際に商品に対する偽りや誤った情報・説明や陳述が禁止されているだけでした。
そこで香港立法会は昨年の7月半ばに、悪徳商法を根絶するため、現在の「商品説明条例」の対象範囲をより広くした「商品説明(不良営商手法)条例」修訂版法案を可決しました。恐らく今年の第2あるいは第3四半期に正式に施行されます。
この条例について詳しくご説明しましょう。
この新しい条例の特徴は、悪徳商法の対応範囲を「商品」から「サービス」にまで拡大して適応させたこと、また、頻度の高い悪徳商法の5つを、刑事責任として禁止されることとなったことです。この条例の真髄/目的は、不正商売の方法を根絶することにあります。一般的に消費者は、商品やサービスに関する情報を具体的に把握できない中、販売者側が消費者に購入を強要することも数多くありました。
この条例により、悪徳商法に対する新しい5つの罪が導入され、違反した場合は最高50万ドルの罰金と5年間の監禁、または簡易起訴で最高10万ドルの罰金と2年間の監禁となります。以下、新たに規定された販売方法は、悪徳商法と見做されるものを紹介します。
〈その1:誤解を招く遺漏(misleading omission)〉
商品やサービスの販売を行う中で、重要な情報を省略したり隠したり、曖昧であったり不確かな情報を提供し、それによって消費者が購入してしまうことです。
消費者は、購入する際、ある程度の根拠や重要な情報を把握した上で、自らの意思で決定することが必要です。
〈その2:脅しによる商売行為(Aggressive commercial practices)〉
消費者に対し、脅し、ハラスメントや嫌がらせ、無理強いをして、消費者が買いたくないものやサービスを買わせることです。
例1:美容院の店員は受付で言い訳をつけてお客様のIDカードやクレジットカード等を預かり、お客が買い物をするまで返さない。
例2:観光区にある電器屋や高級漢方薬を売っている薬局がドアを閉め、「買い物をしないと出られない」や「外にやくざがいる」などの脅しにより客に買い物をさせる。
〈その3:餌(つり)広告(Bait advertising)〉
商品やサービスを法外な値段で消費者を誘惑することです。販売側がありえない値段で商品やサービスの広告をした場合です。
例:新聞に「1円でI Phone を売ります」というキャンペーン広告を出した。数千人の客が殺到したが、店員は「30秒間だけの特売だった」や「2台のみでした」などという、広告に書いていない理由で断ること。
〈その4:最初はつりでお客を誘い、後に(商品/サービス)転換 する(Bait and switch)〉
販売側がわざと人気のある商品やサービスを低価格で客に薦め、お客の気分が乗ってきたときに、無理やり人気のない、あるいは中途半端な他の商品やサービスを押し付けることです。または、最初にお客に薦めた商品やサービスに対して途中から悪口を言い、在庫切れや壊れた商品しかないという口実をあげ、他の商品を買わせる悪徳商売です。
〈その5:不正な支払いを受ける(wrongfully accepting payment)〉
販売側が支払い時に下記のようなことをたくらんで費用を受け取ることです。
①該当商品やサービスをお客に提供するつもりがない。
②先にお金をもらい、後に違う商品やサービスを提供する。
③合理的な期間で該当商品やサービスを提供できない。
例:先払いの美容治療やダイエット塾など。
悪徳商法にとみなされない販売方法になるように、今まで以上に注意が必要となります。
(このシリーズは月1回掲載します)
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筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能
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タグ:Aggressive commercial practices, Bait advertising, Bait and switch, misleading omission, wrongfully accepting payment, 商品説明条例, 悪徳商法