香港ポストコラム 香港における担保 続き
- 2014年07月18日
- カテゴリ:コラム
香港における担保(続き)
前回、物的担保には、Pledge(質権)、Contractual Lien(契約書の先取特権)、Floating Charge(浮動担保)とFixed Charge(固定担保)の4つの方法があることをご紹介しました。
担保に関わる法人の義務
会社が日常ビジネスの中で自分の資産を担保として出した場合、法律上では申告に加え登記をする義務があります。これは公平の原則により、第三者が会社の財政状況を把握し、詐欺を防いだり、該当担保を有効にさせる目的があります。
担保登記をしなかった場合
1カ月以内に、会社登記所に担保の詳細を登記しなかったり、担保文書を登記しなかった場合、該当の担保は無効となります。担保提供会社が、時間通りに担保を登記しないことは、違法です。不登記による最悪の結果は、第三者の債権者に担保を取られたり、或いは、将来、清算があった時に、該当担保品を押さえることが出来なくなります。旧会社条例によると、登記しなかった場合、該当の担保付いた債権は、自動的に直ちに返済する義務が発生するとされていましたが、本年三月の新会社条例では、その厳しい条文が少し緩和され、直ちに返済させるかどうかは債権者が選択できることになりました。万が一、登記し忘れて、後から登記を追加したい場合は、裁判所への申請(Extension of time for application)が必要となります。
どんな担保の場合、登記が必要か?
会社条例によると、担保(Charge)と不動産抵当(Mortgage)は登記が必要とされます。下記のものは、特定担保として、登記が必要です。
・催促をしていない未払い資本金
・売買証書
・不動産、あるいは、不動産から生じる権利(家賃を除く)
・買掛金、売掛金
・催促済みの未払い資本金
・期限の過ぎた分割払い資本金
・船/飛行機、あるいは、船/飛行機から発生する権利
・のれん(Goodwill)、特許、商標、著作権
・在庫商品や事業への浮動担保
担保の優先順位
同じ担保品に、同時に一つ以上の担保が付けられた場合に、この問題が発生します。担保品の売却時には、当然順位の上位者が先にお金を貰えますので非常に重要です。重要な概念として、先に登記した担保が必ず順位を確保したわけではなく、登記は単に、担保を有効にさせる効果があるだけです。担保品が何であるか、或いは、担保の性質により優先順位が決まります。不動産に関しては、土地登録条例(香港法律第128章)で詳しい規定がありますが、今回のコラムの対象外とします。
動産(Moveable property)
動産に対しての担保順位は、コモンローで決まります。
固定担保vs固定担保の場合…基本的には、先に担保設定された方が優先されます。
固定担保vs浮動担保の場合…一般的に、固定担保は浮動担保より優先されます。しかし、もし浮動担保が固定担保より先に設定されていて、且つ、固定より早く結晶(Crystallization)した(つまり、浮動から固定へ変更)場合、その浮動担保は優先されます。
結論
ビジネスの心得として、新規取引先とビジネスをする際に、下記の行動を取ることをお勧めします。
⑴会社の緊密利害関係者(オーナーや取締役)の個人担保を取る
⑵会社の資産に担保付ける
⑶担保を設定する前に、該当資産が先に担保付けられているかどうかの確認
⑷担保した場合、一カ月以内に登記すること
⑸流動担保の場合、不審な動きを感じたら、直ちに固定担保へ変更する
香港での取引でリスクを最小限にするために担保をお考えでしたら、香港法の弁護士にご相談ください。
(このシリーズは月1回掲載します)
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筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能
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