コラム:中小企業のための法務講座『合弁事業(Joint Venture)』

中小企業のための法務講座『合弁事業(Joint Venture)』

中小企業のための法務講座『合弁事業(Joint Venture)』

中小企業のための法務講座

合弁事業(Joint Venture)
合弁事業の一方当事者が亡くなったことで様々なトラブルに発展してしまった案件を最近扱っている。日本語での契約書であったが、合弁事業契約書が2枚しかなく、契約内容が不十分なことが想定外の事項に対応できなかった現状がある。合弁事業を行う際には以下のような点について契約段階から定めておくべきである。

合弁事業契約で不可欠な内容
(1)各当事者の権利及び義務
例えば、A社が70万円を出資し、B社が30万円を出資する場合には、A社が当該会社の70%の株式を得て、B社が30%の権利(株式)を得るのは一般的な考え方である。しかし必ずしもそうしないといけないわけではなく、A社が100万円を出資し、B社は技術をコネのみを提供するということも可能である。つまり、各投資者の貢献の仕方やそれに対して与えられる権利は自由に設定できる。
(2)ビジネスの内容、目的
合弁会社のビジネス内容及び目的をはっきりと定款に載せよう。そうすることで精算手続きを簡便にすることができる。会社を作る段階で倒産することはなかなか考えたくないことではあるが、万が一清算が必要となった場合、精算の手続は非常に時間のかかる手続である。しかし、香港の会社法では、あるビジネス又はある目的が達成できなかった場合には会社の精算ができるという規定がある。そのため、前もってビジネスの内容や目的を定款に載せておけば、それらが達成できなかったときには容易に精算手続を行うことができる。
また、合弁事業の期間についても定款に記載しておけば、その期間を超えた場合には会社を自動的に精算させるという簡易な精算手続きもある。
(3)会社の名前、及びビジネス上で使う商号など
(4)取締役会の構成と取締役の委任
各投資者がそれぞれ何人の取締役を委任することができるのかということは、会社の実質的な経営権をどちらが握るのかを決定する重要な問題である。もし各々の投資者が同人数の取締役を委任できる場合は、どちらの代表が取締役会の議長になるか、またその議長がもう1票の議決権を有するかなど、定款にきちんと記載しておく必要がある。
(5)会社の日常的運営の方法
会社により多少差は出るが、以下のことに関しては必ず契約書に記載すべきであろう。
・各投資者はいつでも会社の会計、帳簿や経営の状況をチェックする権利を有する
・会社の監査役や銀行など、重要な委任についての決定方法
・会社の定款の変更方法(例えば、全員の賛成があった場合にのみ変更できるなど)
・小切手の権限
・いつどこで取締役会を開くか
(6)全員の同意が必要となる事項
会社によって異なりますが、以下のことについては必ず出資者全員の同意が必要となる事項として契約書に記載すべきであろう。
・ある金額を超えた借金、或いは借金の担保をするとき
・重大な投資や買収、契約などをするとき
・重要な人間(CEO,CFO,COOなど)を雇うとき
・会社の資本金の変更や株主の権利の変更
・土地や工場の購入
(7)各投資者は自らの株券を勝手に処分できないこと
例えば、ある会社の投資者がAさんとBさんの二人だけであるとき、Bさんが株を売却したいときには他の者よりも先にAさんに売る権利があるとする。これによって部外者の侵入を防ぐことができる。
(8)配当の方法
これについては私よりも皆さんの方が詳しいだろう(笑)。しかし、この大事な点について記載されていない契約書も多い。
(9)事業の行き詰まり(Deadlock)の解決方法
これは見逃しやすいが重要なことである。例えば、冷静期の導入や紛争の解決(第三者に頼むなど)などを合弁事業契約書にきちんと記載すれば事業が行き詰ったときにも効率よく解決することが可能となる。
(10)各投資家は競争行為を行わないこと
合弁事業を行っている間はそれぞれの投資者家が合弁会社と競合関係になる事業は行わない、或いは、行う場合には事前に必ず他の投資者の賛成が必要となる旨を契約書に記載しておくべきである。

アンディチェン

ANDY CHENG 鄭國有
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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