コラム:新会社法 香港ポストコラム

新会社法 香港ポストコラム

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新会社法

 2013年11月15日号の本欄で香港の会社法が大きく変わる旨お伝えしましたが、香港新会社法(香港法律第622章)は本年3月3日に正式に施行されます。それに伴い従来の会社法(香港法律第32章)は清算のみ機能が残され、会社(清算および雑多な条項)条例となります。新会社法は21部の中に900以上の条文があり、11スケジュールに加え12の付属法律という構成となります。また新しい92種類の申告用フォームが導入されることになります。香港法人の取締役や株主は、この新会社法をある程度把握する必要があります。

会社の種類

 旧会社法では、理論的には資金の調達方法、株式譲渡や株主責任の制限により、8つの種類の会社が作ることが可能でしたが、一部の会社は役に立たないため、現在ほとんど作られていません。しかも私的会社と公開会社の区別がはっきりされていませんでした。そのため今回の新会社法で再分類され、下記の5つに分類されることになりました。

⑴私的株式有限責任会社
⑵公開株式有限責任会社
⑶私的株式無限責任会社
⑷公開株式無限責任会社
⑸非株式保証有限責任会社(つまり私的・公開の区別は廃止された)

 新会社法により、有限会社とは、会社メンバーの責任が「株」または「保証」の形に制限されます。日系企業のほとんどは私的株式有限責任会社として設立しています。その一方、無限会社とは、メンバーの責任が無限となります。

 「私的」か「公開」かの区別は、今まで3つの基準、つまり①株譲渡の制限②株主50人までの制限③株/社債の公開募集禁止——はそのまま保留されています。公開会社の定義は、①私的会社ではない会社②メンバーの責任が非保証の形で制限される会社——のいずれかもう1つの基準が追加されます。保証有限会社とは、清算時に資産が無くなっていた場合、該当会社の定款により、各々のメンバーが会社設立時に約束した金額を出す責任があります。

会社設立、再登記、諸処関係がある事項

▼定款のMemorandum 部分の廃止
▼再登記手続きの改正
▼会社との取引の際の、第三者への保護
▼社印の有無は会社次第となり、香港以外の海外専用の社印に関する規制緩和
▼書類をサインする際の委任状(Power of attorney )利用の拡大

定款について

 今まで、香港法人の定款はMemorandum とArticlesの2部分ありました。Memorandum とは、会社の設立目的、資本金の情報があり、Articlesとは会社の内部ルールが盛り込まれていました。1997年に、会社の事業目的以外のビジネス禁止が廃止されると、現在、法律上では、会社は成年の自然人と同様の権利があります。しかも、授権資本(authorized share capital)と株式の名目価値(nominal value)という概念も廃止されることになり、memorandum の存在価値が無くなります。新会社法の下で設立される会社には、Memorandum of Associationの作成が義務付けられなくなり、Articles of Associationのみを備えればよいことになります。

旧会社の定款はどうなる?

 新会社法により、Memorandumの中の設立目的やメンバーに関する責任などの条文は自動的にarticlesの一部と見なされ、Memorandumの中の授権資本と株式の名目価値の条文は自動的にそのまま廃止されたと見なされます。しかし既存の定款のままでは若干の違和感が残るかもしれませんので、修正も一考に値します。

会社との取引について、第三者への保護

 コモン・ローの中で、もしある第三者が誠実にある会社と取引した場合、その第三者は、その会社の内部ルールに従っているかどうかチェックする必要がありません。言い換えると、実際には、その取引が該当会社の定款で禁止されていたとしても、該当取締役の権限以外であったとしても、「誠実」という前提の元、第三者は該当取引に発生する権利はそのまま有効となります。これが初めて会社法の中で明文化されました。

(このシリーズは月1回掲載します)

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筆者紹介

アンディチェン
ANDY CHENG

弁護士 アンディチェン法律事務所代表

米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能
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