香港ポスト『香港での不法就労』
- 2016年02月26日
- カテゴリ:コラム
オフィス更新が決まりました。引き続きチムサーチョイで続けられることになりましたので、よろしくお願いいたします
香港での不法就労
香港法上は、訪問ビザでは香港入境条例第11条により、香港入境署が観光者(入国者)に入国の際に滞在条件を付ける権利があります。一般的な滞在条件としては、滞在日数と以下の行為が禁止されています。
・有償・無償に関わらず就労、仕事すること
・ビジネスの立ち上げ
・学生として学校に通うこと
また香港内で訪問ビザだけで以下のビジネス活動は許されています。(つまり、就労活動とはみなされません。)
・契約を結ぶこと、あるいは、落札
・商品あるいは設備の設置・包装、その検査あるいは監督
・展覧会・展示会の参加(ただしお金のやりとり、商品とサービスの販売提供、展示ブースの立ち上げは一切禁止)
・商品説明会の参加
・短期セミナーとビジネス会議の出席
・裁判の出廷
就労ビザがないまま上記以外の業務を行う場合、不法就労で逮捕される恐れがあります。今までの経験によると、就労ビザなしで現行犯逮捕される多くは、社内密告(例えば揉めた従業員からの密告)、あるいは取引先やクライアント(例えばサービスや費用に不満があり不法就労の密告で復讐など)によるものです。香港入境条例第17I条により不法就業者は、罰金5万香港ドルおよび2年の禁固が課せられ、不法就業をさせた雇用主は、罰金35万香港ドルおよび3年の禁固が課せられます。またこれにより雇用主=スポンサーになっている他のビザあるいは今後申請のビザに影響が出る恐れがあります。
なお、香港の上訴裁判所の2つの判決(HKSAR v Wong Mok-din [1994] 及AG v Wong Chung-lee [1996])で、不法就労に関するガイドラインが示されました。ガイドラインによると、17I条違反の場合(不法就労)は容赦なく必ず実刑を下すべしとされ(つまり、執行猶予と罰金だけですまない)、例え初犯であってもこれが適応されます。さらに、懲役の長さは15カ月前後と判断されるべきとされています。
ある日系企業でも就業ビザを取得していなかったという理由で不法就労の現行犯逮捕され、弊事務所に依頼のあったケースもあります。訪問ビザで何度もマカオや深圳などを行ったり来たりされている日本人もいるようですが、万が一、不法就労と認定されると、就労者は、数カ月の禁固刑と強制送還となります。雇用就業をさせた会社の罪は、雇用者より重くなります。
香港で就労させるあるいはする場合は、必ず、ビザの事前検討が必要なことを覚えておいてください。
(このシリーズは月1回掲載します)
筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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