香港ポストコラム 『個人情報(プライバシー)条例』
- 2015年05月26日
- カテゴリ:コラム
個人情報(プライバシー)条例
香港において、1996年12月20日施行されたThe Personal Data (Privacy)Ordinance —個人情報(プライバシー)条例がある。同時に、政府から独立した存在で条例用件を実行する公的機関である個人資料公署も設立された。正直なところ、この法律は、OECD加盟国地位の維持のために返還前に急きょ作られ誤解が生まれやすく不完備なところもある。
なぜ条例のタイトルの「プライバシー」がかっこにされたか?
そもそも「プライバシー」とは何だろう。一般の認識として誰がどこで何をやっているかであり、例えば、誰とデートするか。不倫やお風呂風景などの情報である。
一般の人は、この法令を見たときにプライバシーはこの法律で守られると思われるだろう。しかしながら香港にはプライバシーを守る法律は1つもない。この条例は 個人情報(personal data)を守るために作った法律であり、決してプライパシーを守る訳ではない。全条例を読んでも、この条例の中にプライバシーに関する定義はない。しかも、香港基本法(HK Basic Law)ではプライバシーの中文は「秘密」となっており他方、人権法(HK Bill of Rights)の中では「私生活」とされている。この様に法令名からも誤解が生まれやすく、単語ですら一致していない。
データとは?
データとは、紙だけではなくフィルム、ディスクやテープなどの媒体も含め、データ利用者が自身の目的のために個人を特定認識する情報のことである。
データとインフォメーションの違いとは。
インフォメーションとは、ある情報、知識、解読、解釈されたデータのことである。データの方がより広い意味がある。解読や解釈される前のデータは意味がないマークやサインであり、解読済みのデータが伝達、受領、理解されてからこそ、インフォメーションとなる。
条例での個人データとは
条例は下記の3つの条件を満たす個人データしか守らない。
①直接的または間接的に生きている人間に関するデータ
②そのデータから直接的または間接的に、その人間の身元が確認できる
③実用的に、データへのアクセスや処理した形態
この条件により以下のことが分かってくる。
⒜個人情報の範囲は生まれてから死ぬまで。ただし、故人の個人情報は守られていない
⒝名前、IDやパスポート番号、年月日やクレジットカード番号などは極めて重要な情報である。
⒞条例にとって、繊細 データとは生物(血、よだれ、指紋)、経済状況、前科の有無であり、より厳しい基準が採用される。
⒟例えば、紹介状、警告文、懲戒などや「意見」も条例の範囲である。
条例の読み方
この条例で法律上最も一番重要な内容は条例の本体ではなく、条例の付属表(スケジュール)に記載されている。保護原則(DPP)条例により、データ使用者は必ず下記の6つのDPPを遵守しなければならない
DPP1…データに関する収集
DPP2…データに関する正確性、保存、処分
DPP3…データに関する使用、移転、ディスクローズ
DPP4…データに関するセキュリティ
DPP5…データに関する対応ポリシー
DPP6… データに関するアクセスと修正
条例に違反すると最高1万香港ドルまでの罰金となる。
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筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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