コラム:香港ポストコラム 『個人破産及び会社清算に関して(1) 』

香港ポストコラム 『個人破産及び会社清算に関して(1) 』

香港ポストコラム 『個人破産及び会社清算に関して(1) 』

中小企業のための法務講座

個人破産及び会社清算に関して(1)

香港での個人破産 

 債権者は、法定の請求(statutory demand)に基づく1万香港ドル以上の債務を債務者が履行できなかった場合、債務者の破産命令の申立を裁判所で行うことができる。逆に債務者自身も債務の支払いが出来ない場合は破産命令の申立を裁判所にすることができる。

 いったん、破産申請が裁判所にファイルされると取り立てがやむことになる。

会社清算

 会社の清算とは、会社が行っている業務をすべて中止し、法人の全資産を債権者や株主へと分配し、清算完了後には会社の法人格を消滅させる手続きである。

会社清算の理由

 会社清算の主な理由は以下の通りである。

・会社の負債
・業績の悪化
・中国の工場の移転により親会社である香港法人の役割消滅
・会社の事業譲渡により法人が不必要となった
・株主・取締役間の争い
・トラブルにより会社がコントロールできなくなった
・設立時に設定していた期限が来た
・リタイヤ

会社清算に関連する主要な法律

 会社清算は、下記の二つの法律に管理される。

——会社(清算と雑項)条例(香港法律第32章)Companies (Winding Up and Miscellaneous Provisions) Ordinance (Chapter 32 of the Laws of Hong Kong)(以下、会社〈清算と雑項〉条例という)

 会社(清算と雑項)条例の前身は旧会社条例にあった。2013年に香港法律第622章からなる新しい会社条例の実施により、旧会社条例の清算の部分は残され、今の会社(清算と雑項)条例に変名された。

——破産条例(香港法律第6章) Bankruptcy Ordinance (Chapter 6 of the Laws of Hong Kong)(以下、破産条例という)

 破産条例とは、個人破産向けの法律であるが、会社(清算と雑項)条例の中で度々照会されており、例えば、破産条例の中の「個人破産を避けること—いわゆる不正優先処置に関する制限」はそのまま法人にも適応されている。

会社清算の方法

 清算の目的と会社の状況により清算方法を考える必要があり、大きく分けると以下の2種類の清算方法がある。


①強制清算(compulsory liquidation)

 強制清算手続きは、破産管財人(Official Receiver)および裁判所の管理下で行われる。強制清算は圧倒的に債務返済不可能のために債権者が裁判所に債務者である会社を清算させる申請である。以下の清算手続きと比較し、手続きが非常に厳格である。

 まれに、債務のためではなく、株主同士の信頼関係決裂や争い、会社管理の排除や少数株主への不正・不平対処のために、裁判所へ会社を清算させることを要請するケースもある。

 裁判所で解散命令を発した場合、直ちに、取締役の権限が失われ、会社が清算される。

②任意清算(voluntary liquidation)

 任意清算は裁判所を通さない清算手続きである。この任意清算には、3つの任意清算方法がある。

a 株主による任意清算(株主提起、株主主導)

b債権者による任意清算(株主提起、債権者主導)

c特別手続きによる清算(役員提起、債権者主導)

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者紹介

アンディチェン
ANDY CHENG

弁護士 アンディチェン法律事務所代表

米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能

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