香港ポストコラム 『契約不履行時の法律上の救済方法』
- 2016年11月01日
- カテゴリ:コラム
契約不履行時の法律上の救済方法
前回は『法律上の契約』について簡単に解説しました。今回は万が一契約を違反された、もしくは違反した場合に、法律上はどんな救済方法があるのかを説明したいと思います。
もともとは終審法院(最高裁判所)だった旧・立法会議事堂
コモン・ローの損害賠償
香港はイギリスに従い、コモン・ローという法律システムを用いており、コモン・ロー上の契約不履行の救済方法はお金での損害賠償(damages)が多くなります。コモン・ロー上では、契約不履行が発生した途端に、契約不履行された側は法律上、自動的に損害賠償をもらう権利が発生します。契約不履行された側は、自分が不履行により損したことを証明する必要はありません。しかし、損害がない場合はわずかな基本損害賠償しかもらえません。法律上、損害賠償は契約不履行した側を罰するのではなく、契約不履行された側の賠償を重視しています。損害補償は、通常、「もし契約が続行していた場合に、契約不履行された側がどうなっていたか。」を基準に考えられます。もちろん、契約不履行した側は自分の契約不履行から生じた損害だけを賠償する必要があります。
損害賠償の中にもさまざまな種類があり、簡単な例を使用して説明します。
名目の損害賠償
これは、実質的な損害を受けていない場合にもらえる賠償です。他の賠償と比較すると賠償金はわずかです。
交換取引損失
この賠償は二種類に分けられます。一つ目は「価格の差」で、もし契約が続行していたなら得られたはずのものとの差額を埋める賠償です。二つ目は「矯正費用」で、被害者自身が、得られたはずで、その差を埋めるのにどのくらいの費用がかかるかを判断する賠償です。あまり違いが分かりにくいかもしれませんが、結果的には大きく異なることもあります。
有名な判例を例として解説します。Aは潜水をするために家に7・6フィートのプールの施工をBに頼んだが、結局Bは6フィートしかないプールを作りました。①「価格の差」から見ると、7・6フィートと6フィートのプールは大した差がないから賠償も少なくなります。一方、②「矯正する費用」から見ると、もしAが7・6フィートのプールに変更する場合の費用は、必ず①より圧倒的に高くなるでしょう。
信頼損害賠償
もし信頼をしたために出資していた場合、契約違反されたものは、出資金が回収できます。しかし、これは相対的に稀な賠償です。
原状回復賠償
この賠償は、契約不履行した側が相手から受け取っていたものを返却する賠償です。例えばネットで買い物をした時、もし売り手が商品を発送しない場合は、買い方は売り手に支払った費用を請求する権利があります。
投機的賠償
不履行された側が、不履行した側のせいでチャンスを失った場合、実質的な損害がなかったとしても、基本損害賠償以上の賠償をもらえる可能性があります。
例を挙げると、Cは1000香港ドルを支払い、Dが開催する芸能コンテストに申し込みました。しかし、Dはそのコンテストを中止しました(つまり、DはCとの契約を違反した)。Cは必ずそのコンテストで勝てるとは限りませんが、Dが契約に違反したことでCが勝つチャンスを失くしました。この場合、CはDに賠償を要求することができます。
(このシリーズは月1回掲載します)
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤 務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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