中小企業のための法務講座『中国委託公証人』
- 2020年03月24日
- カテゴリ:コラム
中国委托公証
香港ポストが休刊し、早くも1年が経ちました。皆様、この1年間いかがお過ごしでしたでしょうか。
私自身の一番大きな変化は、中国委託公証人となれた事です。中国委託公証人と言われてもほとんどの方は何の事がご存じないと思われますが、中国大陸で使用するために、香港に関連する行為、事実、書類の真実性、合法性や法律意見を提供する業務を中国司法部から委任されているのが中国委托公証人です。最高人民法院と人民大会堂にて表彰され弁護士生涯の中で一つの光栄な出来事でした。
中国委托公証人の背景
返還前は植民地であった香港は、中国国内とは法制度が根本的に異なるために、中国国内では香港関係の証明には、国際公証のような制度が必要と考えられていました。しかしながら、政治や民族の感情面から見ると香港は中国にとって同じ民族であるために国際公証の形(国対国)のような証明制度は違和感があったために、国際公証よりも区域内の証明制度が可能かどうかの検討を行い、1981年中国委託公証人制度はこの背景の元に作られました。中国委託公証人とは 香港で発生した行為、事実証明、法律、書類の合法性について中国内で使用できるための証明制度です。1981年初めての8人の香港で尊敬される弁護士が中国司法省に選ばれこの制度は始まりました。画期的な制度と言える。徐々に制度の改善と完備が進み、2019年現在、年間10万件以上の中国公証案件があります。
中国委託公証人
中国委托公証人とは、公証人中國委托公証人(香港)管理辦法により10年以上の経験がある香港法弁護士が、中国の関連する法律や法規を習得し、中国語で業務を遂行し、公証書類を中国語で作成出来る弁護士が受験資格を得られます。試験と面接により合格すると中国委託公証人となれます。この38年間で香港弁護士の中で533人(2019年度現在:香港弁護士11,000人在籍)しか合格しておらず、つまり4.8%ほどの狭き門の試験になります。
中国委托公証人の業務
中国大陸と香港の法制度は異なるために、香港政府が出す各種公的書類と中国大陸の書類は異なります。 中国大陸で香港の書類が必要な場合は、 中国司法部委托の中国公証人が公証書類を作成し、偽造を防ぐために、更に、中國法律服務(香港)有限公司へ持参し、登記、査定、押印されると中華人民共和国の法律で有効な書類となります。公証は、必ず中国委托公証人の捺印が必要となります。
いつ中国公証書類が必要となるか。
『公証書類が欲しい。』というよりは、何らかの手続の関係上、中国政府機関からの要求により中国公証書類を準備し始めます。具体的に何のどんな資料が何部必要かはご自身でご確認頂く必要があります。 偽造を防ぐために、中国委托公証人が公証書類を作成後に中國法律服務(香港)有限公司(中国司法部が香港で開いた法人)で登記、査定、押印された後更に、中国国内の指定箇所へ直接郵送する必要がある場合もあります。
中国公証書類のよくある5分類
- 声明書
- 一方の署名書類
- 多方面の証明書類
- 法律事実証明
- 書類原本及びコピーの証明
- 署名の法律書類の証明
中国委托公証人が証明出来るのはどのような書類か。
個人
各種委任状(中国国内での不動産売買・訴訟など)
香港登記結婚証明
香港出生証明
婚姻および家族状況証明書
中国人と結婚する場合の声明書
遺産継承や放棄声明書
身分証の同一人物証明など
法人
日系企業で関係があるのは、こちらが多いと思われます。香港法人の子会社を中国大陸で設立する時には必ず求められます。
会社委任状
香港法人状況証明
取締役会や株主決議証明書
資金証明
労務
裁判提出書類
商標
CEPAなど
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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タグ:China-Appointed Attesting Officer, 中国, 中国委托公証人, 公証, 北京, 委任状, 香港