香港ポスト2013年11月15日 『新会社法』
- 2017年10月17日
- カテゴリ:コラム
新会社法
80年近く使われていた会社法が、おそらく来年には、大きく変更されることになります。もしあなたが、取締役を務めていたり、株主であれば、この新会社法について、注意を払う必要があります。
新会社法とは
新会社法は、2012年7月12日に香港立法会で2012年28番法案として可決され、2014年上旬に実行される予定です。新会社法は、香港法律第622章の新会社法の実行により、おそらく2014年度(具体的な施行日未定)から、従来の会社法、つまり、香港法律第32章は過去のものとなります。
新会社法の特徴とは
現在の会社法は1932年度香港で制定され、数えきれない修正を経て、そのまま利用されてきました。現在の会社法は、367条文と24個の付則で構成されている一方、新会社法は、921の条文および11個の付則の構成となり、現在の会社法と比べると、大幅に増えています。現在の会社法のおおよそ3分の1の内容は、会社清算、目論見書、株式上場に関するもので、厳格的には、純粋な会社規制に関するものではありません。新会社法の原案者の考えで、いろんな概念を無理矢理1つのセクションに詰め込むより、今回の法改正を機会に、設立、解散、組織、運営、資金調達(株式・社債等)や管理などの純粋な会社に関する内容にページを多く割いています。
内容の増大は、内容の現代化、古めかしい英語から分かりやすい英語にすることで、誰でもこの法律が読めるようにする意図があります。しかし、最近私が出席した弁護士の勉強会では、むしろ、新会社法は、より分かりにくくなっているとの法律学者の指摘もあります。
新会社法の原則——どこが変更されるか。
それでは、具体的に、新会社法はどこが変更されるのでしょうか。
①中小企業に関するもの
香港では、いわゆる一人会社、あるいはペーパーカンパニーの割合が高いのですが、零細企業に配慮し、実際の会議をする必要がなくなり、書面での議事録の適応範囲が拡大されます。そして、会社の裁量で年度株主会の開催を不要とする新しい権利が与えられます。
②法的な概念の革新:例えば、株式一株の額面価値(nominal/par value)や名目/授権資本金(nominal/authorized share capital)などの概念が無くなり、定款のMemorandum(注)の部分はすべて廃止されます。
③取締役関連 会社の管理をより高めるために(つまり取締役の責任が増える)、プライベート会社の取締役は、最低基準として、少なくとも1人は必ず「人間」である必要があります。つまり、会社の取締役が、全て法人であることが認められません。例えば、会社の商品を安値で自分が保有する別会社へ販売したり、会社の秘密情報を利用して自分が稼ぐなどの、取締役が自分の地位を悪用することは、信認義務(Fiduciary Duty)に反しますが、こうした信認義務が法典に記載されます。
今時の通信手段の発展が、会社の意思決定において法典で認められるようになりました。例えば、株主会議の開催地は固定の場所ではなく、発言と投票する通信機能があれば、誰でも同時に世界各地で参加することができます。同じく会社のお知らせは、手紙のような伝統的な方法、あるいは例えばメールなどの電子通信、会社のHPという方法で、株主とのコミュニケーションが認められます。
次回も、引き続き、新会社法にご説明いたします。
※注…従来の定款は、Memorandumで会社の基本的/重要な事項(例えば、資本金額や設立目的など)を定めた部分とArticlesで、会社の内部ルールを定めた部分の2つの部分で成り立っていました。これからはArticlesだけ残ることとなります。
(このシリーズは月1回掲載します)
筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能
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