コラム:香港ポスト 『香港における労働法②』

香港ポスト 『香港における労働法②』

香港ポスト 『香港における労働法②』

中小企業のための法務講座

香港における労働法②

4賃金

定義

 『賃金』とは、なされた労働あるいは、労働に関連したすべての報酬、所得、手当、サービス費用のことである。日系企業がよく出しているような通勤・皆勤手当、コミッション、および残業手当などの手当も賃金とみなされる。

賃金控除

 労働者が休んだ場合は、その期間に対する按分額、商品や設備に損害を与えた場合でも、最高300香港ドルまでのみ控除可能である。賃金控除には様々な条件があるが、ここでは省略するものとする。労働者の賃金から、法定規定以上の控除を行った雇用主は、起訴され、有罪の場合、最高で罰金10万香港ドルおよび1年の拘禁刑となる。

賃金の支払い

 賃金は、賃金計算期間の末日から7日以内に賃金を支払わなければならない。故意に、または正当な理由なく、支払い期限までに従業員に賃金を支払わなかった場合、労働裁判所で民事訴訟を起こされるだけはなく、労務署に告訴され、刑事責任までも追及され、35万香港ドル以下の罰金及び3年以下の禁固刑に処される可能性がある。

 雇用主が1カ月以上にわたり、従業員への賃金の支払いが行われなかった場合には、従業員は、雇用契約が雇用主により終了したものとみなされる。この場合、雇用主は当該従業員から、法定あるいは契約上の規定の支払いに加え、解雇予告手当も要求されることとなる。

5休日

①法的に雇用主が従業員に付与することを義務付けている休日

休息日(Rest day)
 従業員は、雇用期間中において7日毎に1日の休息日、法定休日および年次有給休暇を付与される。雇用主により休息日を指定でき、もし不定期の場合は、各月の初日までに、雇用主は、その月の指定休息日を口頭あるいは書面により通知しなければならない。従業員の同意が得られれば、休息日を他の日に変更も可能だが、その場合は、本来の休息日以前の同月内か、あるいは休息日以降の30日以内に付与しなければならない。もし休息日に、法定休日が重なった場合は、法定休日は、休息日の直後の日に付与し、直後の日が法定休日、振替休日、代休あるいは休息日であってはならない。設備の故障など緊急事態が発生した場合を除き、休息日に労働することを共用してはならない。もし休息日に労働させた場合、48時間以内に、代替え休息日を伝え、本来の休息日より30日以内に他の日を休息日として付与しなければならない。香港は代休付与が義務付けられているが、日本や中国のように割増賃金の法的規定がないため、割増賃金を払う義務はない。ただし、実態として割増賃金を支給している日系企業が多いようである、正当な理由なく、休息日を従業員に付与しなかった雇用者、あるいは休息日に労働を強要した雇用主は起訴され、最高罰金5万香港ドルとなる。

法定休日(Statutory Holiday)
 勤続期間に関わらず、以下の法定休日を従業員は与えられる。

・1月1日 元旦
・旧暦正月の元旦、2日目、3日目
・清明節
・5月1日 メーデー
・清明節
・端午節
・7月1日 香港特別行政区設立記念日
・中秋節の翌日
・重陽節
・10月1日 国慶節
・冬節あるはクリスマス

②就業規則などにより任意で定めた法律が要求する以上の休日

 雇用主が法律で規定される以上の休日を付与することは、任意であり、何の問題もない。

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者紹介

アンディチェン

ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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