GBA大湾区の司法試験
- 2022年05月10日
- カテゴリ:コラム
GBAの司法試験
正式名称は、粵港澳大湾区弁護士資格試験ですが、かなり幅広く、習近平法治思想を含む、香港特別行政区基本法、マカオ特別行政区基本法、中国法律史、内地司法制度、弁護士職業道徳、民法、商法、民事訴訟法、仲裁法、刑法、刑事訴訟法、行政法および行政訴訟法となります。
この試験は、香港高等法院に認定されたソリスター又はバリスターで該当登記名簿に記載され、一時業務停止を受けてないソリスター又はバリスター、或いは、マカオの場合は、マカオ弁護士会に有効登記された弁護士、且つ、5年以上の経験がある弁護士に受験資格があります。もちろん中国語が読み書きでき、中国語で業務を行うことができる必要があり、中文簡体字での問いに対し、中文繁体字での回答での回答も許されています。司法試験自体は、1日で6時間の試験でした。更に、合格者は今年1月から4月まで講義が続いており、更に試験があるとされています。そのため私も合格者の1人として、今現在、毎週金土日での講義を受け更に中国法の知識を深めているところです。
『大湾区』の機能の中での香港の役割・使命は、国際金融、ビジネスと付属するサービス業務、法律、会計、投資などがメインです。中国がより国際化するために香港やマカオの弁護士が中国で法律業務を務められるようになることは非常に重要です。この資格取得により香港弁護士は、域内9都市で民事・商事に関する訴訟業務を含めて中国法を取り扱うことが可能となります。
中国国内と香港、民商事種類判決についての相互承認と執行について
GBAにおける法律分野の中でも、訴訟は特に興味を持たれている分野でしょう。一国二制度の元に、香港と中国国内の司法協力は積極的に進められ、両地に関わる法律上の争いがより効率的に解決されるように図られてきています。香港の基本法第95条の規定により、香港は司法方面において協議と商談(協商)の方法で中国全国各地域の司法機関と連絡と相互協力を提供出来るとされています。
例えば:
1999年6月:相互仲裁裁決の相互執行に関する手配(これは香港返還によりNew York Conventionの適用がなくなる解決)
2006年7月: 協議管轄に関する手配(旧手配)、商業協議で契約同士が自分で選んだ司法管轄権(訴訟地)の判決による支払い義務の執行(金銭的のみ)
2017年6月20日:婚姻と家庭事項に関わる判決の相互承認と執行するために、中国最高人民法院(Supreme People’s Court)と香港特別行政区政府は、<大陸と香港特別行政区法院相互婚姻家庭民事案件判決の承認と執行についての手配>を結んだ。香港法院から離婚に関する絶対判決、婚姻無効に関する絶対判決、慰謝料、子供に関する保管令、中国法院から離婚、婚姻無効、慰謝料、育児などの判決は全て該当し手配の中に含められる。
最近、中国大陸と香港は、民商事種類判決についての相互承認と執行につき大きな発展を遂げさらに進化しました。
2019年1月18日、中国最高人民法院と香港特別行政区律政司(Department of Justice)は<<大陸と香港特別行政区法院相互民商事判決の承認と執行についての新手配>>(以下、“新手配”と言う。)を結びました。 この新手配は今まで両地の司法発展において最も幅広く、一番意味深い一つアレンジとなります。この新手配により、両地ほぼ90%の民商事の判決は相互的に承認と執行ができることになりました。これは両地の民商事領域で基本的に全面カバーという目標が達成されたことを意味します。特に旧手配と異なり、金銭的だけではなく非金銭的両面においての執行が可能となったことは大きな進歩といえます。
香港法人を親会社とし、中国法人を子会社としている多くの日系企業にとって、香港法での契約が一般的ですが、この施行により益々香港を活用した中国ビジネスがやりやすくなるに違いありません。
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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