『損害賠償の概念』 香港ポストコラム
- 2013年07月25日
- カテゴリ:コラム
損害賠償の概念
香港でのビジネスで、契約違反により一体どんな賠償がもらえるだろう?
英国や香港などの英語圏では、法典ではなく、裁判官により決められるコモンローにより損害賠償のルールが定められている。
損害賠償の概念
賠償金(Damages)とは裁判所の裁定に従い、被害者がもらえる金額である。そして、賠償金を決める方法は損害請求の性質により異なる。一般的に言えば、契約違反の場合、被害者がどの程度賠償金がもらえるかどうかというのは、裁判所の標準として、「もし契約がきちんと履行したらどうなるか」という観点から考えられる。
例えば、Aが1時間当たり100ドルの費用でB(内装職人)の10時間分を予約し、6月1日に家の修理契約をしたとする。もし、Aが自分の都合により予約を勝手にキャンセルした場合、BがAに請求出来る賠償金は1000ドルになる。逆に、6月1日にBがドタキャンし、やむを得ず、Aは1時間当たり110ドルで他の修理人を雇い、10時間の修理をやらせた。その場合は、AはBに対して、100ドル(1100—1000)を請求できる。
賠償金の種類
賠償金にはさまざまな種類がある。例えば①実質的損害賠償金(actual damages) ②懲罰賠償金(punitive damages /exemplary damages)③名目賠償金(Nominal Damages、つまり極めて少額の象徴的な金額)——などである。
①実質的損害賠償金
通常、珍しい事件を除き、裁判所は実際賠償金しか認められていない。つまり、懲罰賠償金は99%の場合香港では認められない。例えば、AはBに月末までに1台のテレビ(1000ドル)を配送する契約をした。しかしAは約束通り月末までに出荷できなかった場合、Bは実質的損害賠償金(1000ドル)しか請求できない。もし、BがAに5000ドル請求する場合、その4000ドル分は懲罰賠償金となり、裁判所に認められない。
②懲罰賠償金
それではなぜ懲罰賠償金の概念があるのだろうか?それは悪質な事件が2度と起こらないように、裁判所がわざと加害者に懲罰的に多めに払わせるためである。例えば、コスト削減のために、有害成分が入った粉ミルクを1缶25ドルで販売していた。その場合は裁判所の判決は25ドルではなく、1000ドルなどの懲罰的賠償金を払わせる。
③名目賠償金
名目賠償金とは、被害者が「金銭的には」被害をあまり受けてない場合の賠償である。例えば、公衆の面前で、AがBに「君はブスだなぁ」と言った。Aは怒って訴えたとしても、賠償金の請求をするのは不適切だろう。無理に訴えた場合、AはBに正式な謝罪と1ドルの名目賠償金を払うこととなる。
賠償金の計算基準
⑴関係性(Remoteness)
関係性とは先のテレビの例で、例えば、テレビが配達されなかったために、重要な経済番組を見逃し、そのために保有株がその日に3000ドル落ちた。テレビ代と3000ドルの株式の損を請求した。この場合、裁判所は恐らくその3000ドルの請求はあまりに被害と遠すぎ、関係性があんまりないと判断し、3000ドルの賠償金は認めないだろう。
⑵賠償金の計算(Measure of damages)
被害者の被害は「お金」という基準で計算できるかにより賠償金が計算される。まず、契約書の不履行により、被害者は金銭的にどれぐらい損を受けたのかを計算する。それが出来ない場合、被害者が契約をしなかった場合、彼がどれくらい節約できたのかで計算される。
契約違反の解決方法とは
将来、もし契約に違反した場合、それがどれくらいの被害になるのかをあらかじめ契約書に規定賠償金条文などの項目で記載しておく。損害の計算が難しいときや契約該当者が制限を設定したい時に用いられ、懲罰的でない限り、通常、裁判所に認められる。
(このシリーズは月1回掲載します)
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筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能www.andysolicitor.com
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