コラム:香港ポストコラム『マネーロンダリング』

香港ポストコラム『マネーロンダリング』

香港ポストコラム『マネーロンダリング』

中小企業のための法務講座
マネーロンダリング

 最近、マネーロンダリングの被害者やマネーロンダリングの罪で捉まったなどの逆の立場の案件を数件請け負っています。新聞を見ていると毎日のようにマネーロンダリングで逮捕され有罪となっているニュースをよく見かけます。マネーロンダリングなんて、自分には全く関係ない話だと思いますか。例えば、重要な取引先から、「ちょっと今日本が休みでお金が動かせないから、ある取引先のお金を香港の口座で受け取って、指定の口座へ送金してもらえないか。」と言われた時、断れますか。

マネーロンダリングとは

 マネーロンダリングとは、麻薬取引、脱税などの犯罪によって得た汚い資金を、他人の口座を転々と資金移動することで資金洗浄することを意味します。香港では有組織および厳重罪条例「Organized and Serious Crimes Ordinance (Chapter 455)」や麻薬収益回収条例「Drug Trafficking (Recovery of Proceeds) Ordinance(Chapter 405)」で起訴されますが、両条例の第25条では、犯罪や麻薬販売から得た資金と知っている、或いは、犯罪や麻薬販売から得た財産の一部あるいは全額と知っているはずの合理的な理由があり、それを処理する場合は、犯罪とされています。

 この条例が非常に怖いのは、検察が不正な行為または犯罪で得た財産であるということを証明する必要がないからです。例えば自分が知らない間に口座に入金があり、きちんとその資金の理由が説明できない場合、起訴されてもおかしくありません。さらに怖いのがマネーロンダリングの場合、他の刑事事件と異なりすべての銀行口座を凍結されてしまいお金が使えなくなってしまうことです。生活に困るだけではなく、法人口座が凍結されてしまうとビジネスが出来なくなってしまいますから、嫌疑をかけられるだけで非常に大きな損失になります。また日本人の場合、香港外への出国が禁じられたり、ビザ更新に影響がある場合は、日本や香港での仕事に影響があるかもしれません。

逮捕された時や刑事裁判時にやるべきこと

 事件現場で逮捕された場合を除き、警察は夜中から明け方にかけての時間で容疑者を捕まえます。こうした時間は、容疑者が一番無保備で、弁護士が捕まえられない時間だからでしょう。

 逮捕された時にまずやるべきことは、弁護士に連絡することです。しかしながら今まで私が受けた刑事事件では、無謀にも自分一人で対応したケースが多々あります。香港人でさえ刑事事件の裁判では、ソリスターのみならずバリスターも雇っているのが大多数の中、なぜ、言葉の面でも不利な日本人は弁護士を雇わなかったのでしょう。

1.日本の基準や常識を香港の刑事事件に応用する。つまり、日本では「大したことではないから、香港でも大丈夫だろう。」と勝手に思った。日本の基準や常識を前提としてしまうと取り返しのつかない可能性があります。

2.弁護士に連絡するのは自分の権利であることを知らない。

3.費用が心配。

4.自信過剰。自分は被害者であるから警察が救ってくれるはず。この考えは非常に危険で、特にマネーロンダリングでは、被害者と思っていたところ被告となっているケースがあります。

5.警察からの引き留め。一部の警察は、「これくらいは大したことがないから、弁護士をわざわざ探さなくても大丈夫。」とごまかし、さっさと事情聴取を行い、証言証拠を取りたがります。

(このシリーズは月1回掲載します)

筆者紹介

アンディチェン<

ANDY CHENG

弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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