香港ポストコラム 『中国・香港の商標』
- 2016年04月08日
- カテゴリ:コラム
中国・香港の商標
知的財産権という言葉を聞くようになって久しいが、企業の国際化とともにその重要性は増すばかりです。自社の知的財産権を守ることは企業として当然のこととなりつつあります。
2007年10月19日、(株)良品計画(以下、良品計画とする)とは無関係な香港企業が中国で「無印良品」および「MUJI」の商標を第25区分(被服、帽子、靴下、靴)で登録していた件ついて、当該香港企業の商標登録の取消を認める最終判決が下されました。2000年5月に、良品計画が当該香港企業の商標登録の無効取消を提起してから、実に7年5カ月もの歳月を費やしたことになります。その間の訴訟費用や、中国の店舗で衣料品の販売が出来なかったことによる機会損失は莫大なものでしょう。
①商標とは
商標とは、ある事業の商品または、サービスを、他の事業の商品またはサービスと識別できるようにするために、文字または図式で表現された標識のことです。例えば、文字(個人の氏名を含む)、表示、デザイン、頭文字、数字、図形要素、色、匂い、商品の形状および包装、あるいは該当標識の組み合わせも認められます。
商標を保護するためには、その保護を主張したい各国に対して直接出願して商標登録を行うか、または、マドリッド協定議定書に基づいた出願で国際登録を行うことが必要です。商標は各国共通で保護されるものではなく、地域的なものであるため、日本で御社の商標が登録されていたとしても、日本のみでしかその権利は守られません。良品計画の場合、香港では登録していたものの中国では登録していなかった隙間を突かれた訳です。香港、中国やマカオででも保護されたければ、各々登録する必要があります。
②商品またはサービスの区分
香港の商標登録は、商品やサービスの種類ごとに全部で45区分に分けられています。商品は第1区分から第34区分まで、サービスは第35区分から第45区分までに分けられており、この分類は世界共通です。上記の良品計画の事例で、当該香港企業による商標登録は、被服や履物の区分である第25区分においてのみだったため、良品計画は、第25区分以外の区分の当該商標の出願についてはすぐに認められましたが、香港企業の商標登録は悪質であったにも関わらず、当該商標登録の無効取消が認められるまでに長い時間を要したことは先に述べたとおりです。
③登録の重要性
香港において、商標を登録していない標識の持ち主は、普通法による限られた手段でしか当該標識の侵害者を起訴するしかできません。さらに、自分が標識の真のオーナーであり、侵害によりビジネスに損失が及ぶという点を証明するための大量の証拠を集めなければなりません。これらの証明に膨大な時間がかかり、ひいては費用がかかります。また、知的財産意識が高まる21世紀に、自社の標識を登録していないことは、裁判官の心象にどのような影響を及ぼすかは、頭の良い読者の皆さんには言うまでもないことでしょう。
一方、登録された商標の持ち主は、商標が侵害された場合には、一枚の証書を提示するだけで、簡単に侵害者を起訴することができます。また、訴訟を起こすまでもなく、偽者や海賊版が見つかった場合、税関で素早く取り締まりや調査をしてもらうことが可能です。逆に、登録されていなければ、税関の力を借りることはできません。
次回に続きます。
(このシリーズは月1回掲載します)
筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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