新会社法:続き
- 2014年05月12日
- カテゴリ:コラム
新会社法:続き
今回のコラムは新会社法の特徴を説明します。
社印について
旧会社法では、会社は必ず社名が彫り込まれた社印を持たなければなりませんでした。海外用の社印を作る時には、必ず定款に記載され、かつ、どういう海外取引の際に使用するかまで定款で定められる必要がありました。
現在のビジネス環境の中、新会社法では、社印の有無は、会社自らの自由意思で選択できます。もし会社が社印「有り」を選んだら、社印は必ず法律の規定通りに作成されなければなりません。要は、必ず金属造りで、社名が判読できるように彫られる必要があります。違反した場合、最大1万香港ドルが課されます。海外用の社印についても会社の自由意思となります。
署名について
今まで押印が必要な書類も、社印の規定変更に伴い、1人の取締役しかいない会社の場合はその人、2人、あるいは、2人以上の場合は、授権人間2人が署名し、書類に、会社としての署名と明記すると印鑑がなくても、法律上は、有効な署名となります。
委任権(Power of attorney )
今まで香港法人の委任権は、必ず海外(香港以外)でしか使えませんでした。しかし、その制限は厳しすぎると判断され、今後、香港法人の委任権は香港内外で認められることになります。
新会社法:第四部:資本金
新会社法の第四部は最も大きな改革が導入され、例えば、下記のものがあります。
—株式の額面価値の強制廃止、つまり無額面株式
—株式・額面および授権資本金の概念がなくなる
—持参人払い株券(Bearer Share)の発行権利が取り上げられた
—従来、新株発行に対して株主の許可が必要でしたが、今後は、オプションや株主割当発行の際も必要となる
—会社が株譲渡(share transfer)を断る時に必ず理由を教える必要がある
—資本金や資本金構成が変更した場合、直ちに申告義務が発生する
—株券紛失時の再発行手続きが、簡易化される
さて、中でも重要なことピックアップしましょう。
額面資本金、授権資本金の廃止
額面資本金とは、株を発行するために最小限度の必要支払い金額です。例えば、多くの会社は最大限資本金…1万香港ドル(1株1香港ドル、1万株)、発行済み株は1株としています。そういう場合は理論的には資本金は1香港ドルにしかすぎません。しかし、これでは会社の実際の状況を把握するためには意味がない情報です。その1香港ドルの会社が、1千万香港ドルの不動産を持っている場合など、むしろ、誤解させる可能性もあります。2014年3月3日午前零時から新法人/旧法人を問わずすべての会社は「資本金」という概念しかなくなり、プレミアム株も同時に消滅します。
会社の持参人払い株券の発行権利
持参人払い株券とは、株券を持つだけで会社の株主と同じのような権利を持つという意味です。つまり、株主名簿や株譲渡の手続きが一切いりません。しかし現在、持参人払い株券の発行は非常に珍しくなっていました。しかも、手続きが不要なため、マネーロンダリング の対象になりかねないため、新会社法では、持参人払い株券の発行が禁止されました。
オプションおよび株主割当発行
少数株主の株権を薄めることを守るために、株へ転換できるオプションや株主割当発行も、今後は株主の許可が必要となります。
株譲渡に対する拒否
今まで、会社がある株渡譲を株主名簿に記載しない場合(つまり、株譲渡を認めない)、理由は必要なく、当事者に通知を送るだけで構いませんでした。しかし、今後は、当事者が理由を知りたい場合、会社側は必ず28日以内に当事者に理由を教える必要があります。
(このシリーズは月1回掲載します)
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ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能
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