香港の雇用契約書(Employment Agreement)および就業規則(Employment Hand Book)
- 2020年09月22日
- カテゴリ:コラム
香港の雇用契約書(Employment Agreement)および就業規則(Employment Hand Book)
雇用契約書(Employment Agreement)
香港で人を雇う際には 、雇用契約書(Employment Agreement)を締結します。雇用主と従業員双方の合意があれば口頭でも成立するとはいえ、何年も経ちトラブルにならないとも限りませんので、書面で契約しておいた方が安全なのは言うまでもありません。その際は、従業員にも1部のコピーを渡す必要があります。もし雇用主が雇用条件を変更する場合には、直ちに従業員に通知し、同意を得るべきことと香港の雇用条例に記載されています。
元従業員が同じビジネスを起こし元顧客に連絡を取るなどしたために、訴訟にまで発展したケースもあります。『勧誘禁止義務(Non-Solicit)、競業避止義務(Non-Compete)、接触禁止義務(Contact Prohibition)をきちんと定めておけばよかった。』と後になって後悔されてからでは遅いので、きちんと契約書を整えておくことが重要です。
就業規則(Employment Hand Book)について
日本では10人以上の従業員を雇用する場合は、労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督 署長に届け出なければならないとされています。一方、香港では就業規則の作成や届け出義務はありません。しかしながら、今までの日系企業の雇用トラブルを見てきた経験からするときちんと整備しておくべきでしょう。
日本の雇用契約書や就業規則をそのまま転用されているケースも見かけますが、香港の法律とそぐわない点があるため、香港の労働法に従ったものを整備しておくべきでしょう。もちろん香港では日本語ではなく、英語または中国語で作成する必要があります。
就業規則の内容
法律上で必ず求められる記載事項は特にありませんが、以下の様な項目があります。
・勤務時間
・賃金
・有給休暇・産休・弔事休暇・陪審
・退職及び解雇
・福利厚生(MPF・保険)
・悪天候時の取扱
・服務規程
・懲罰
・会社のポリシー
・個人情報保護
・セクハラ
① 遅刻・早退・欠勤が発生した時の扱い、②台風や警報が出た時の対応 ③時間外労働の扱い ④解雇時の対応などは特にご相談が多いため、特に細かく規定しておいた方がよいでしょう。
新型コロナの影響
新型肺炎検査(14日の強制隔離検査或いは自発隔離検査)に伴う休業保障対応は香港の雇用条例において規定がありません。労務署のガイドにより、柔軟な対応を勧められているだけです。
https://www.labour.gov.hk/eng/news/pdf/EO_related_QAs_on_COVID-19_eng.pdf
https://www.labour.gov.hk/tc/news/pdf/EO_related_QAs_on_COVID-19_tc.pdf
新型コロナの影響により、従業員が新型コロナに感染した、或いは感染の疑いがある場合の対応も検討しておく必要があります。 実際に顧問先からもこの様なご相談を受けています。
政治的思考
新聞によると、とある日系企業の従業員がSNS上での個人の意見を述べていたことにより、会社として謝罪せざるを得ない自体に追い込まれた事件がありました。個人としての政治的思考はどうであれ、会社の従業員として、特に政治的な発言、行動には注意が必要と言わざると得ませんし、そうした規定を定めて置くのも一案でしょう。
昨今の状況を踏まえ、会社として上記の規定を盛り込んだ就業規則に変更、作成することを考える時期として良いタイミングでしょう。なお、雇用契約書や就業規則の給料、有給休暇などの根本的な条件を変更する場合は、雇用主は従業員の同意を得なければならず、仮に同意を得ずに就業規則の変更を行った場合は、その変更は無効となりますのでご注意下さい。
ANDY CHENG 鄭國有
弁護士 中国委託公証人 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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