香港ポストコラム 『弁護士とは?』
- 2015年04月24日
- カテゴリ:コラム
弁護士とは?
数年前のことであるが、香港ロー・ソサイティから「弁護士でないにも関わらず弁護士を語っている日本人詐欺師(実名入り)がいる。」との警告がありました。個人的には、弁護士のふりをしてもそれほどよい事があるとも思えないが、これについて弊事務所のブログに書いたところ、クライアントや他の弁護士からかなり反響があったのでこの機会に弁護士という資格について書きたいと思う。
日本ではよく「国際弁護士」という言葉でテレビに紹介される弁護士がいたりするが、主として日本国外の弁護士資格を持つものに対する通称であり、「国際弁護士」に相当する資格や職業はそもそも存在しない。おそらくどの国も同様だが、法律は、各国固有のものであり、資格を取得した上に、各国の弁護士協会の名簿に登録した上で法律アドバイスができる。
香港では、法律事務を処理する専門職として、法廷を仕事の場としているバリスター(法廷弁護士)と、ビジネス上のさまざまな法的業務に関っているソリシター(事務弁護士)に分かれており、いずれか1つの資格しか持たないのが通常である。クライアントのバリスターへの直接依頼は禁止されている。訴訟となるとまずソリスターがクライアントと打ち合わせ、訴状作成送達などの様々な裁判手続きを担い、バリスターが法廷で弁論するという分業制が取られている。なお、私自身は香港法のソリスターであり、日々クライアントから直接法律相談を受けている。
香港において、香港法の資格を持たない限り、香港法のアドバイスをすることは禁止されている。香港ロー・ソサイティの独自の会計ルール、毎年の資格維持の勉強、売り上げに応じた保険など様々な規定に則り、法律事務所に所属のソリスターが登録国法律アドバイスを提供することができる。先ほどのロー・ソサイティの警告には詳細が記載されていなかったが、おそらく考えられるのは、以下の通りである。
⒈そもそもいずれの国の弁護士資格も有していない
⒉いずれかの国の資格を有しているが(例えば、日本の弁護士資格)、香港で登記していない
⒊以前いずれかの資格を得たが、更新していない
日本やアメリカの資格がある弁護士の場合は、日本法やアメリカ法のアドバイスが可能である。例え、日本では弁護士であったとしても、香港の案件は、香港法弁護士とクライアントとの架け橋的な通訳や翻訳しか認められておらず、アドバイスをする資格も知識もない。お抱えの案件が、日本の案件であれば日本法の弁護士に直接、頼むのがベストであろうし、同様に、香港の案件であれば、香港法の弁護士に直接、頼むのが適切である。
ちなみに香港弁護士協会の香港法弁護士の検索ができるサイトは下記の通りである。香港での資格がある全てのソリスターが登録されているはずである。
また香港で法律アドバイスをする場合、必ずロー・ソサイティでの登録が必要である。香港法以外の弁護士でも、香港で法的アドバイスを行う場合、香港のロー・ソサイティに外国法弁護士として登録が必要となっている。
香港において登録されている外国法法律事務所が、該当国の法律のみを香港においてアドバイスが可能である(香港において登録されている外国法法律事務所リスト、香港において登録している外国法弁護士リストを参照)。
ここで登録されている弁護士は、香港において登録している国の法律アドバイスが可能である。トラブルを未然に防ぐため、あるいはトラブルに合っているために弁護士に相談するのに、さらなるトラブルを防ぐためにも、弁護士に依頼する前に、そもそも適法の有資格者かつ資格を更新しているかどうかチェックした方が良いだろう。
https://www.hklawsoc.org.hk/pub_e/memberlawlist/mem_withcert.asp
https://www.hklawsoc.org.hk/pub_e/memberlawlist/mem_foreign_firm.asp
https://www.hklawsoc.org.hk/pub_e/memberlawlist/
筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能
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