香港ポストコラム『フランチャイズビジネス(1)』
- 2017年01月26日
- カテゴリ:コラム
フランチャイズビジネス(1)
昨今、日本の有名レストランやお店が次々と進出している。10年ほど前、ラーメン博物館のような店が銅鑼湾にオープンした。最初は日本のラーメン職人が監督していたためおいしかったものの、その後みるみるうちに味が落ちてついには潰れてしまった。フランチャイズ契約だったようだが、利益を増やすためスープが薄められていたと聞いたことがある。こうしたことが起こらないよう、自社のブランドイメージを保ちつつ、またビジネスを拡大していくためにはどうしたらよいだろうか。
フランチャイズとは
フランチャイズとは、自分ですでに成功したビジネスモデル、あるいはブランドをライセンスの形にして加盟社に売ることである。ビジネスモデル等を提供する本部と提供される側の加盟店との間のビジネス関係である。加盟社はフランチャイズを与える企業の指示に厳格的に従い、商品やサービスを加盟者に提供する。例えばマクドナルドやコンビニエンスストアは、フランチャイズを利用し海外にも店舗を保有する。当該関係に基づいて加盟店はすでに成功したビジネスモデルや経営方法、商標、ブランドなどを自分のビジネスに利用することができる。そのため加盟店は起業のリスクを最小限に抑えることができ、また本部はビジネス拡大のためのリスクと投資額を削減できる。
フランチャイズについての法律規制
香港にはフランチャイズについての法律はなく、またフランチャイズを行う際に政府への登録や申告の必要もない。つまり、フランチャイズは純粋に当事者間(つまり、本部と加盟店間)の契約関係によることになり、その争いは契約法(contract law)に基づいて解決される。一方、米国と中国本土はフランチャイズについての法律があるが、まだ世界的にその傾向にあるわけではない。ちなみにフランチャイズにかかわる知的財産権の紛争については香港の知的財産権に関する法典によって解決される。
フランチャイズの特徴
もともとフランチャイズとは、すでに完成された有名ブランドを有する大手の企業がリスクを抑えた店舗拡充の手段として編み出したものである。マクドナルドやセブンイレブンなどが好例である。一方の契約相手は、すでに完成された商品やブランドを利用することでリスクを抑えて起業したいと考える人たちである。そのため売り手市場であり、基本的に本部に有利な契約が結ばれることが多い。
本部がフランチャイズ契約を結ぶ際に最も気をつけるべき点は、コストをかけて作り上げたブランドイメージを損なわないこと、および商品や経営ノウハウを奪われないことである。そのため加盟店に対して以下のような制限が課せられるのが一般的である。
・本部の経営方針に従うこと。自分の意向で自由に経営することはできない。
・加盟店は定期的に本部に料金を払う。
・本部から提供された商標、ノウハウ、名称などはフランチャイズ契約の範囲内においてだけ使用が認められ、加盟店の自用は一切禁止される。
フランチャイズ契約を結ぶ際に重要なポイント
フランチャイズの形でビジネスを始めるときには、すきのないフランチャイズ契約書を作ることが非常に重要である。さきに述べたように香港ではフランチャイズについての法律がないため、紛争が生じた際には契約書に基づいて解決するからである。明瞭な契約書の作成が様々なトラブルの防止につながる。契約書において特に重要な点は以下の通りである。
開始と期限
加盟店が先決条件を満たさなければ、開業できないようにし、また、長期間(例えば10年以上)にわたる契約をできる限り避けた方が安全である。これは経営効率の悪い加盟店や、ルール違反をする加盟店と早めに手を切るためである。
開始と期限と同じように加盟店の質を保つための重要なステップである。
(このシリーズは月1回掲載します)
筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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