香港ポストコラム『個人情報保護条例改正 2012』-ダイレクトマーケティングに対する新規規制-
- 2013年05月27日
- カテゴリ:コラム
「個人情報保護条例改正2012 」
—ダイレクトマーケティングに対する新規規制—
読者の皆さんも、おそらく香港での生活の中で毎日のように、SMSや売り込みの電話で悩まれたご経験があるかと思います。今の通信が発達している時代、クライアントの情報は、ビジネスにとって宝です。多くの会社はより多くの利益を得るために、クライアントの情報を悪用したり、他の会社と交換したり、さらには他の会社に売ったりするなどしてきました。
例えば、通信会社の中には、クライアントの個人情報(例えば、生年月日、住所や電話番号など)を勝手に他の会社と交換したり販売したりする会社がありました。
「個人情報保護条例改正2012年(The Personal Data〈Privacy〉Amendment」が今年の4月1日に施行され、迷惑なダイレクトマーケティングや売り込み電話の悩みが大幅に減ることになるでしょう。
⑴ダイレクトマーケティングへの規制
ダイレクトマーケティングを行うために、個人情報の持ち主の個人情報を利用する場合、個人情報取扱事業者は必ず事前に、その個人情報に関する利用情報を当該本人に教える必要があります。個人情報とは、例えば、生年月日、職業、年収、ID番号やクレジットカードの買い物記録からの買い物の傾向などのことです。
こうした個人情報の何の情報を利用するつもりがあり、また何の商品、サービスが売り込みの対象であるかを事前に、個人情報取扱業者は、読みやすく、理解しやすい形で当該本人に伝える必要があります。
⑵個人情報保護条例での同意
ダイレクトマーケティングにおいて、個人情報の持ち主の「有効な同意」或は「反対しないという指示」がなければ、個人情報の利用あるいは個人情報を他社に提供することは禁止されます。ここでの「有効な同意」とは該当者自らの返事、あるいは自ら反対しないという指示です。
以前は、「該当者が使用者に返事をしない」「該当者の沈黙や無視」などは同意とみなされていました。しかし今回の個人情報保護条例により、そういう同意はもう「同意」とみなされません。
⑶同意の成立
個人情報取扱業者が自社のためにダイレクトマーケティングをする場合は、該当者は書面または口頭で、同意や反対しない等の返事をします。この同意の方法は、個人情報の持ち主の費用負担がない、無料の方法でなければなりません。もし口頭の返事の場合、個人情報取扱業者は必ず14日以内に書面で該当者の意思を確認する必要があります。
もし個人情報取扱業者が第三者にその個人情報を提供する場合(つまり、第三者に個人情報を売って、その第三者がダイレクトマーケティングをする)、第三者に個人情報を提供する前に、個人情報取扱業者は、必ず該当者の同意を書面でもらう必要があります。
⑷初めての使用に関する義務
ダイレクトマーケティングにおいて、初めて個人情報を利用する場合は、必ず個人情報の持ち主に通知する義務があります。また当該者は何時でも個人情報取扱業者に反対あるいは、以前の自分の同意を取り消す権利があります。
⑸罰則
新条例により、ダイレクトマーケティングにおいて、個人情報取扱業者が通知なく個人情報の持ち主の同意がないまま、当該者の個人情報を自社で使用、あるいは第三者に渡した場合、最高罰則は50万香港ドルと3年間の懲役、もし利益のために、第三者に売却する場合、最高罰則は100万香港ドルと5年間の懲役になります。
(このシリーズは月1回掲載します)
筆者紹介
ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤務の経験もありジェトロ相談員も務めている。日本語堪能
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タグ:Direct marketing, 個人情報, 個人情報保護条例改正, 規制